-----節税の目的とはいったいなんでしょう?-----
ほとんどの人は、目の前の税金(会社の経営者であれば法人税、個人事業者であれば所得税)を減らすことが節税だと思っています。
もちろんそれも「税金を減らす」という目的においては節税と言えるでしょうが、それではなぜ税金を減らしたいのでしょう。
これまで多くの経営者に出会い「なんのために節税をしたいのですか?」と聞いたところ、明確な回答はほとんどありませんでした。
「払わないですむのであればそのほうが良いに決まっているじゃありませんか」あるいは「そりゃ節税は経営者として義務ですよ」、さらには「税金は1円たりとも払いたくないから」というものまで千差万別です。
しかしこれらは本当に節税の目的なのでしょうか。
これらの経営者に「それでは税金が減ったとして、それをどうするんですか?」と聞いたところ、それを貯蓄すると答えた人は皆無でした。
全員が何らかの形でその節税分のお金を使いたいと答えました。
もっと良い車がほしい、もっと大きな家に住み替えたい、旅行に行きたい、値札を気にすることなく買い物がしてみたい・・・。
まさにこれが節税の目的です。
節税の目的は「税金を減らすこと」ではなく
「可処分所得を増やすこと」だったのです。
-----可処分所得を増やすこと=節税ではありません-----
それでは「可処分所得を増やすこと」と「節税」はイコールなのでしょうか。
実はここに大きな勘違いがあります。
一時的に節税にはならなくても、最終的には多額の可処分所得を増やす方法も存在するからです。
経営は一年ごとに成果を判断するべきものではないのと同様に、節税も一年ごとに考えるべきものではありません。
数年かけてじっくりと積み上げることで、大きな節税と可処分所得の増加が期待できます。
しかしそのためには、必ずクリアしなければならない問題点も存在します。
それは業績の維持向上です。
「節税」という限りは納税が無ければ話になりません。
多くの可処分所得を得ようと思えば、節税以前に十分儲ける必要があります。
節税だけで可処分所得が増えることはありません。
-----いわゆる「節税策」では可処分所得は増えません-----
それでは可処分所得を増やすための節税策とはどのようなものがあるのでしょうか。
役員報酬を増やす?
自動車を買う?
社長の住居を社宅にする?
社長を被保険者として会社で保険に加入する?
はたしてそれで本当に可処分所得が増えるでしょうか?
役員報酬を増やすと所得税・住民税・社会保険料が増加します。
節税と言いながら納税額が増えていることになります。
「法人税で払うよりも所得税の方が少ないから」という理由で役員報酬を増額しているケースが多いようですが、これは安易な選択でしょう。
経験のある人はお気づきでしょうが、思ったほど手取り額は増えません。
自動車や社宅・保険なども会社から資金が流出します。
これらを複数組み合わせてプランニングしていくことになりますが、そこには逆転の発想が必要となります。
その一例が「どうすれば利益を増やさずに役員報酬を減額できるか?」です。
これができれば、法人税は変わらずに所得税・住民税・社会保険料を減らすことができ、個人の可処分所得を増やすことが可能となります。
「社長さん! 税理士の言うとおりにしていたら、会社つぶれますよ!」という本がありますが、その通りかもしれませんね。
]]>金融機関からの融資には、大きく分けて「プロパー融資」と「制度融資」があります。
「プロパー融資」とは、金融機関が独自に融資を行うものであり、もし担保や保証人が必要であれば金融機関が直接設定します。
これに対し「制度融資」とは、各地方自治体が行っている事業資金の融資斡旋制度のことをいいます。最も有名なものに信用保証協会があります。
信用保証協会とは地方自治体が設置しているもので、定められた保証料を納入することで金融機関からの融資時に保証人の代わりになってくれるものです。
中小企業の場合、ほとんどの融資がこの保証協会付きのものになると思います。
金融機関からの融資を受ける時に必要となるこの保証協会ですが、もちろんこの保証制度を受けるためにも保証協会の審査が必要となります。
ところでこの保証協会の審査にはいくつかポイントがありますが、 最も大切なことは保証協会毎に審査の方法が違うという点です。 例えば大阪府では、保証協会の審査は基本的に書類だけで行われます。 経営者の経営能力や人柄は判断材料とはなりません。 さらには審査書類(基本的には決算書)からは見えない優位点も、基本的には審査の対象となりません。 これに対して兵庫県は保証協会の審査員が経営者の面接を行いますから、経営者の人柄や審査書類以外の重要事項も考慮の対象となることがあります。
この審査方法を変更させることは不可能でしょうから、保証協会の保証を取り付けようと思えば、やはり審査書類を良く見せることが最重要課題となるでしょう。 それではどうすれば良いのでしょうか。 もちろん決算書の内容が良ければ問題はないのでしょうが、中小企業が融資を受けたい時というのは資金繰りに行き詰まった時の方が多いため、決算書の内容はあまり良くないことがほとんどです。 それではどうしようもないのでしょうか。 ここで考えるべきことは、保証協会に提出する審査書類を作成するのは誰なのかということです。
金融機関を経由して融資を受ける場合、その金融機関の融資担当者が窓口となります。
そしてこの担当者が行内の稟議書から保証協会への提出書類を作成します。
金融機関は出来るだけおカネを貸したいと考えているものです。しかし万が一の貸倒によるリスクを考えると、おいそれと貸せないというのが現状です。
それを保証協会の保証を付けることでリスクを軽減できるのであれば、貸し出しもしやすくなります。
もちろんこれはその融資担当者の成績にも繋がりますので、融資担当者とすれば保証協会の審査に通る方がありがたいことになります。
ということで融資担当者は、時として「稟議が通りやすいように」絵を描いてくれることがあります。 もちろん粉飾やデタラメは出来ませんが、決算書からは見えない企業の優位性をうまく表現してくれることはよくあります。 これは保証協会に対するものに限らず、行内の融資会議でも積極的に働きかけてくれます。
ただし人間関係が良好であればの話です。
経営者が普段から融資担当者と積極的に交流し、その人間性を評価されていれば、融資担当者はその経営者のために動いてくれるでしょう。 逆に「銀行はカネ貸すのが仕事やろ!」と考えているような人には、「すみません、保証協会がダメだというもので・・・」というように、融資を断る言い訳に保証協会が使われることもありますので、ご注意ください。
]]>多くの経営者は節税したいと考えています。
われわれ税理士にも節税の依頼が耐えません。
しかし人は本当に「節税がしたい」のでしょうか。
「節税をする」ことで倒産する企業を見るたびに「あぁ、経営者は本当は
節税がしたいわけではないはずなのに・・・」と考えてしまいます。
人はなぜ節税をしたがるのでしょうか。
理由は簡単。
可処分所得を増やすためです。
言い換えると自分の自由になるお金を増やしたいからです。
もしこの目的が達成できるならば、手段は節税でなくとも良いはずです。
-----社長の可処分所得を増やすお手伝いをいたします-----
今日伺った企業での一コマ。
N社長は経営コンサルティング会社を経営しています。
非常に優秀な企業ですから、最近急激に業績が伸びてきています。
そのN社長が今後の経営戦略において二つの選択肢に悩んでいました。
どちらを選択しても企業の存続には問題が無いシチュエーションでしたので、
N社長が最終判断のためにした質問が「どちらが節税になりますか?」でした。
試算したところA案の方が節税になることがわかりました。
そこでN社長はこのA案を選択しようとしましたが、気になった事があったので
尋ねてみました。
「社長の本当の目的は節税ですか、それとも可処分所得を増やすことですか?」
一瞬N社長は凍り付きました。
わたしが何を言っているのかが理解できなかったようです。
「安藤さん、どういうことでしょう?」
いぶかしげにわたしにそう尋ねるN社長。
わたしは言い直しました。
「いえ、節税がしたいのか、それとも使えるお金を増やしたいのか、どちらですか?」
これに対するN社長の回答は次の通りでした。
「それはもちろん可処分所得を増やすことです」
「なるほど、それではB案を選択してあえてこの税金を負担することで、これだけ可処分所得が増えます」
N社長が躊躇せずB案を選択したことは言うまでもありません。
節税に興味がある経営者はたくさんいますが、
そのほとんどは節税そのものが目的ではありません。
可処分所得、つまり自分で自由に使えるお金を増やすことが目的のはずです。
前回のエントリーは、資金調達のためには自己資本が重要であるというお話
でした。
今回はそれが節税とどのような関係があるのかを解明していきましょう。
経営者であれば、誰でも節税は興味があるところですね。
もちろんそれが悪いわけではありません。
不必要な税金など1円たりとも支払う必要などありませんからね。
しかしそれも度を過ぎると、企業経営に悪影響を及ぼすことになります。
節税をするということは、納付する税金を減らすということですね。
それでは納付する税金はどのように計算するのでしょう?
所得税も法人税も、所得に対して課税されます。
簡単に言えば、利益に課税されるということです。
その税金を減らすということは、利益を減らすということにつながります。
中小企業において多く見られるのが、経費を増やすことで利益を少なくする
方法です。
この方法を使うと、確かに節税となります。
節税になるのは良いのですが、企業経営というものには波があります。
良いときもあれば悪いときも当然あるのです。
そして経営状態が悪化すると、当然それに伴って資金も不足します。
資金が不足すると、経営者は金融機関に融資を依頼することになります。
悲劇はこのときに起こります。
融資の依頼を受けた金融機関は、審査をするにあたりその企業に決算書の
提出を要請します。
一般的に直近のものから、2〜3期前のものまでを提出することになります。
ここで金融機関が目にする決算書は、節税のため利益がほとんど計上されて
いない決算書なのです。
利益が計上されていないということは、当然その利益の蓄積である利益剰余
金もほとんど無いことを意味します。
利益剰余金がほとんど無いということは、自己資本が少ないということを意
味するのです。
まさかこの状態で自己資本が充実している企業なんてあまり考えられません
からね。
ということは・・・
そうです、例のスコアリングに悪影響を及ぼすということになるのです。
もちろん例外はあります。
金融庁が編纂している金融検査マニュアルというものがあります。
これには、金融庁が金融機関の貸し出し状況をチェックするときの項目が書かれています。
各金融機関は、この金融検査マニュアルに従って企業をスコアリングしていることになりますが、実は金融検査マニュアルには別冊があります。
この別冊には、中小企業への特例が載っているのです。
中小企業と大企業を同じレベルでスコアリングすることは適切ではないからです。
この特例のうち代表的なものとしては、中小企業の経営者からの借入金があります。
中小企業は、経営者からの借入金がある企業が多いのが特徴となります。
これは中小企業の場合、企業と経営者は一体であることがほとんどだからです。
そして、企業と経営者が一体であるということは、経営者から借りたお金には強制的な返済義務が存在しないことを意味します。
つまり、社長からの借入金は無いものとして見てくれるということになります。
このように例外はあるものの、やはり基本は自己資本の充実が最重要ファクターとなります。
ということで、節税と融資の受けやすさは相反することとなるのです。
節税も良いですが、あまり度を過ぎると事業経営に支障を来すこともよくありますので、注意が必要ですね。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ブログランキングに参加していますっ!
↑
ワンクリックっ!お願いしま~す。
]]>
前々回のエントリーで、自己資本についてはご理解いただけたことと思います。
今日は一歩進んで、それがどのように経営に関係するのかを解説してみましょう。
自己資本とは財布の中身のうち、返済しなくてもいい部分だといいました。
このことから、自己資本比率が高い企業ほど外部に資金が流出しにくい構造となっていることがわかります。
借入金の返済をしなくてもいいからですね。
企業経営を左右するファクターのうちで、最も重要なものの一つが資金繰りです。
企業経営はお金が回らなくなった時点で、ゲームオーバー。
どんなに利益が出ていても、倒産することになります。
倒産を免れるためには、どこかから資金を調達してくる必要がありますね。
この資金調達の方法は4つあります。
順番に見ていきましょう。
◆売上代金の回収
現金商売の場合は、単純に売上高を伸ばすことが資金調達に直結します。
それ以外の場合は、売掛債権を回収することがこれに該当します。
商品を販売すると、通常は利益が生じます。
しかし代金を回収しなければ、その利益は絵に描いた餅でしかありません。
それでは、どうすれば効率的に売掛債権を回収できるのでしょう?
一つの方法は、回収サイトを短縮することです。
つまりお得意様に掛け合って、商品を販売してから代金を回収するまでの
期間を短くしてもらう方法です。
しかし書くのは簡単ですが、なかなかこれは難しいですね。
ですからはじめに契約するときから、資金の流れを考えて回収サイトを決
める必要があるのです。
二つ目の方法は、売掛金の流動化。
これには売掛金を担保にお金を借りる方法と売掛金そのものを買い取って
もらう方法があります。
もっとも身近な例では、クレジットカードがありますね。
これは商品の売掛債権をクレジットカード会社に売却する方法です。
また貿易の世界では、昔からL/C(信用状)を用いた取引が行われていま
す。
医院経営においても、国から支払われる診療報酬を事前に買い取る企業が
出てきました。
このような方法をとることで、本来であれば数ヶ月先でなければ入金され
なかった売上代金を早期に回収することが可能となります。
◆経費削減
経費を削減すると、当然ですが出ていくお金は減りますね。
ネガティブな方法ではありますが、案外効果の上がる方法でもあります。
欠点は、即効性がないということ。
経営が悪化してから経費削減を言い出す人が多いですが、これは間に合わ
ないことがほとんどです。
経費削減で残る資金はさほど多くありませんから。
長い目で見て経営を安定させていくときに用いる手法です。
◆増資
これは出資を募って資金を調達する方法です。
中堅クラス以上の企業であれば有効な方法ですが、中小企業に出資してく
れる人はほとんどいないでしょう。
◆融資
ということで、結局ここに落ち着くわけです。
やはり企業経営に当たっては、融資は資金調達の手段として必要不可欠
だと言っても過言ではないでしょう。
たまに無借金経営の企業を見ますが、まれです。
ここでの大きな問題は、貸してもらえるかどうかに尽きます。
借りたくても貸してもらえないケースもたくさんあるのです。
このように資金調達の手段はいくつかあるものの、やはり融資が最も重要な手段となるでしょう。
このように経営者にとって気になる融資ですが、ほとんどの経営者が大きな勘違いをしているのも、この融資だったりします。
銀行はお金を貸すのが商売だ!
って思ってませんか?
このように考えているとすれば、それは大きな勘違いです。
銀行は利息を得るのが商売!
です。
厳密には融資利息収入と預金利息支出の利ざやで稼いでいるのが銀行業務です。
つまり利息収入を得る手段として融資があるのです。
何が言いたいかというと、利息収入を得るためには貸し倒れの危険性のある企業には融資できないということなのです。
この単純な理論がわかっていない経営者が多いですね。
頭では理解しているのでしょうが、本当にはわかっていません。
その証拠に、金融機関から融資を断られたら怒っていますから。
怒りの矛先は、金融機関にではなくて自分の経営に向けるべきなのです。
とはいえ、やはり融資を受けられなくなると経営にも多大な影響が出ます。
それであれば、金融機関が融資したくなるような企業になればいいんです。
『えっ?そんな方法があるの?』
もちろんあります。
ありますが、マジックではありませんので一朝一夕には事は運びません。
普段からの経営方針が問われる事になります。
金融機関が企業に融資するかどうかを判断する際に重要視する項目として、スコアリング(格付け)があります。
これは毎期の決算書をベースに各企業のスコアが定められ、これを大前提として融資の可否が決定されます。
ということは、このスコアリングが良くなるような決算書を提出すればいいということになりますね。
昔はこの判断はすべて人が手作業でやっていましたが、最近ではソフトに入力すれば即結果がはじき出されるようになっています。
このソフトがどこを見ているかがわかれば、スコアリングが改善されることになります。
このスコアリングソフトが最重要ファクターの一つとして認識するものが、自己資本なのです。
やっと本題にたどり着きましたね。
このように融資を受ける際には自己資本が重要であることはわかったと思います。
それでは、それが節税とどのような関係があるかわかりますか?
その答えは次回に明らかとなります。
みなさんもちょっと考えてみてくださいね。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
]]>資金繰りは、企業経営における永遠のテーマですね。
であるにもかかわらず、あまりにも多くの経営者が放置しているのも、またこの資金繰りなのです。
資金繰りってなんでしょう?
改めてこう聞かれると、答えに詰まるのではないでしょうか?
資金繰りとは、
明日以降のお金を見張ること
を言います。
そして明日以降、最低でも3ヶ月、出来れば1年先のお金を見張ることが出来れば、企業の資金繰りは飛躍的に楽になるでしょう。
そのためには、明日以降の支払予定を管理するところからはじめます。
なぜならば、支払予定というものはかなり先まで確定していることが多いからです。
企業とりわけ中小企業にとって最も資金繰りを圧迫するものは三つあります。
一つ目は借入金の返済。
二つ目は家賃やリース料の支払い。
三つ目は税金の支払いです。
そしてこの3つは、ほとんどの場合1年先まで確定しています。
税金についても、納税額は別として納付期限は決まっています。
つまりいつその支払いをしなければならないかは、早い時期から確定しているということなのです。
これ以外にも1年先まで確定しているものは、たくさんあります。
予定納税・自動車税・車検・保険・給料・賞与・源泉税・市府民税・・・
このように、支払額はともかく支払時期が確定しているものは、その時期が来れば必ず支払わなければならないものです。
そうであれば、早い時期からそのための資金を確保しておく必要があるということですね。
この管理が出来ていない企業がほとんどなのです。
そうなると、支払の通知書や請求書が届いてから金策をしなければならなくなります。
お金を管理する技術やお金を貯める技術に王道はありません。
増やす技術は別として、貯めるには地道な努力しかないのです。
間違えて欲しくないのは、増やすだけでは貯まらないってことです。
是非みなさんは、貯める技術を身につけてくださいね!
えっ?「貯める技術ってなんだ?」ですって?
貯める技術とは、出る金を制することだけです。
実は、これこそが資金繰りそのものなんですよ。
資金繰りがきちんと出来ている企業は、お金が貯まります。
これでお金が貯まらないのであれば、出る金を制しきれていないのです。
そんな経営者の決まり文句「いるものは仕方ないじゃないか!」
「仕方ない」じゃ出る金を制しきれていませんよね!
資金繰りを制する者はお金を制する!
もしかしたら、これがお金を貯める王道なのかもしれませんね。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
]]>人は、お金の使い方に性格が表れます。
高級外車を乗り回し、身なりも一流のブランドで固めている人は、やはり普段の生活も派手です。
その一方で、お金があるにも関わらず中古の国産車に乗り、身なりも清潔ではあるものの決して高級なものを纏わない人もいます。
企業、とりわけ中小企業では、その方針は社長が握っていることが多いようです。
ということは、その企業におけるお金の使い方は、その社長の考え方を色濃く反映することになります。
企業におけるお金の使い方とは、経営方針と言い換えることもできます。
企業は経営方針に従って、設備投資をしたり蓄財をしたりするからです。
企業におけるお金の使い方を一覧表にしたものが、決算書となります。
ということは、決算書を見ればその企業の経営方針が見えてくるということですね。
これは、その企業の社長の正確が見えてくることと同じなのです。
つまり、決算書を見ればその企業の将来を占えるということになります。
こんな決算書を考えてみましょう。
社員は社長と3人のスタッフです。
現預金はそれほど多くはありません。
売掛金は年間売上高の2ヶ月程度と平均的です。
業種はサービス業のため、在庫はありません。
固定資産として自社ビルがあります。
もちろん敷地も自社の所有です。
車両運搬具は1000万円を超えています。
投資その他の資産には、保険積立金があります。
負債には借入金が目立ちます。
自社ビルを建てるときに銀行から借りたためです。
自動車もローンのため、未払金が計上されています。
社長からの借入金はありません。
損益計算書では、売上高と売上総利益は多く計上されています。
売上総利益の50%程度は人件費で占められています。
総人件費の1/3は役員報酬となっています。
費用で目立つのは、保険料・消耗品費・旅費交通費・交際費などです。
銀行からの借入金が多いため、支払利息も多くなっています。
税引前当期純利益は、売上高の20%となっています。
この決算書からは何が見えるでしょうか?
現預金が多くないということですが、ここからは三つの原因が考えられます。
一つは業績が悪いため資金繰りが悪化しているという可能性。
二つ目は節税目的で費用を支出しているという可能性。
三つ目は借入金の返済に追われているという可能性です。
売上高と売上総利益は多いということから、業績は悪くないはずです。
ここから、この企業の社長は積極的に節税をしていると考えられます。
さらに、借入金が多いことから返済に追われている可能性もあります。
次に自社ビルがあるというところに着目します。
設備投資は売上に反映するものでなければ意味がありません。
この企業はサービス業ということなので、基本的に自社ビルは必要ありません。
つまり自社ビルの土地建物は不必要な資産である可能性が高くなります。
ここで、先ほどの現預金が少ないという点にも着目してみます。
税引前当期純利益が売上高の20%もあるにもかかわらず、現預金が少ないということは、やはり資金が借入金の返済で食われていることを意味します。
ここからもこの自社ビルが収益計上に役立ってはいないことが伺えます。
車両運搬具が1000万円を超えているということは、台数が多いのか、1台あたりの価格が高いのかのどちらかです。
いずれにしてもローンで購入しているということは、資金繰りが良くないことを意味します。
必要性の乏しい自社ビルを有しているところから、おそらくこの社長は自己顕示欲が強いのではないかという予測ができます。
そういう見方をすると、損益計算書での交際費が多いことも納得できます。
こういう社長の場合、一台あたりの価格が高い車両を購入しているケースが多いようです。
旅費交通費が多いのは、移動にもっぱらこの自動車を使用しているため、ガソリン代や高速代、駐車料金がかさんでいることを意味します。
保険積立金が存在し、保険料が多いところから、節税目的の保険に加入していることが考えられます。
現預金も多くないようですから、やはりこの社長は熱心に節税に取り組んでいるようです。
消耗品費が多いところからも、この傾向が見られます。
10万円未満の備品は減価償却の対象とはならないため、全額費用となるからです。
さて、ざっと見てきましたが、この企業の将来はどのように見えますか?
積極的に節税に取り組むのは良いのですが、社内の留保利益が少なければ、いつまで経っても信用はつきません。
こうなると、いつ銀行がお金を貸してくれなくなってもおかしくはないのです。
返済が滞る可能性が高くなってくるからです。
このようなときのためには、社長の役員報酬の一部を貯めておき、資金繰りが悪化したときにはこれを利用するようにするものです。
しかしこの企業、社長からの借入金はありませんでした。
ここから、この社長は役員報酬を使い切っていることが考えられます。
役員報酬を使い切る場合、最も多いパターンは住宅ローンです。
比較的多い売上総利益の50%が人件費であり、そのうちの1/3が役員報酬ということですから、相当な金額であることになります。
ここから、この社長はプライベートでも派手な生活をしていることが想像できます。
このような決算書から見えるのは、近い将来業績が悪化したときに、一気に倒産街道を突き進むことになることです。
まずはじめに自社ビル分の銀行借入金が返済できなくなります。
業績が良いときでさえぎりぎりの資金繰りだったのですから、当然ですね。
こういう場合、通常であれば役員報酬を減額してしのぐのですが、住宅ローンがある場合にはこれができなくなります。
こうなると、社長は自社ビルと自宅を守るために、周りの取引先に迷惑をかけるようになります。
外注先には、単価を下げろといいます。
銀行には、借入金の返済額を下げろといいます。
スタッフの給料を下げようとします。
さらにはスタッフを減らそうとまでしはじめます。
このような社長を、誰が応援しようと思うでしょう?
誰が力になってやろうと考えるでしょうか?
こうして下り坂を転がるように倒産への道を走り出すようになるのです。
大切なのは、必要のない設備投資はしないということ。
万が一の時の事を頭に入れて、常に余剰資金を持ちながら経営することが必要なのです。
企業は、お金が無くなれば倒産するしかありません。
しっかりと資金繰りを身につけることが最も重要なのです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
]]>前回までで、ヤフオク一つとっても会計的には非常に奥が深いことがおわかり頂けたかと思います。
今回は、ヤフオクを通じて会計学を見ていきましょう。
前回のエントリーで、ショップと個人の違いについてお話ししました。
個人でヤフオクに出品する人の多くは、その商品が不要になったからという理由が多いということを、テレビゲームの例で説明しました。
長い時間並んで購入したゲームソフトは、会計的に見ると仕入原価が高くついているためヤフオクで売ったとしても利益は見込めないということでしたね。
一方ショップの方は、同じゲームソフトでも大量に購入することでゲームソフト1個あたりの仕入原価を下げることが出来るということでした。
それでは両者を比較してみましょう。
ヤフオクという全く同じ場所で、個人が売った場合とショップが売った場合とでは、ゲームソフト1個あたりの売上高は変わるでしょうか?
同じ時期に同じソフトを売ったとしたら、1個あたりの売上高は同じとなります。
これはいいですよね?
次に粗利を考えてみましょう。
粗利について詳しく知りたい方は、Vol.1 ヤフオクってホントに儲かるの?をご覧くださいね。
粗利とは<粗利=売上高ー売上原価(仕入高)>というものでした。
それではヤフオクという全く同じ場所で、個人が売った場合とショップが売った場合とでは、ゲームソフト1個あたりの粗利もおなじでしょうか?
違いましたよねっ!!
個人が売った場合には大赤字でしたが、ショップが売った場合には黒字となりました。
これが原価管理というものなのです。
原価管理とは管理会計における概念ですが、最近はやりの変動費にまつわる話は、これを複雑にしたものとなります。
ともかく難しいことは抜きにして『原価意識を持て』という言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。
上司からイヤというほど聞かされた人も多いのではありませんか?
ここから見えることは、経営において大変重要なのです。
つまり
売上を追うな、利益を追え!
ということです。
ヤフオクの例で見たとおり、売上高は同じでも原価意識がなければ赤字になってしまうところを、原価意識があれば黒字に転化できるのです。
いかがですか?
最近は売上至上主義の企業も減ってきましたが、それでもまだまだ売上高にとらわれている企業が多いと感じます。
今一度、会計の基本に立ち返ってみてはいかがでしょうか?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
]]>前回まで見てきたところによると、ヤフオクってそれほど儲かる訳じゃなさそうですね。
それじゃどうしてあれほどたくさんの人が出品しているんでしょうか?
その理由はいくつかありますが、最も多いものはリサイクルでしょう。
つまり、自分が使っていたものが不要になったためリサイクルに出すというものが一番多いでしょうね。
このリサイクルの考え方からすると、前回まで見てきたゲームソフトも大損ということではなくなります。
なぜだかわかりますよね?
そうです、自分で利用したからです。
自分がそのゲームをしたかったからこそ、何時間も並んで購入したわけです。
ということは、この時間に対する人件費相当額というものは、まだ誰もやっていないゲームを体験したという満足感で相殺されることになります。
ゲームソフトというものはそのゲームをやり終えると、その人にとっての価値は著しく低くなるものです。
中にはすでに必要なくなったと感じる人もいるでしょう。
その必要の無くなったソフトをヤフオクで売却することが出来るからこそ、そこに価値を見いだすのです。
この場合は必ずしも損をしたとは感じません。
逆に得したと感じる人もいるでしょう。
これはこのように考えることが出来ます。
5,000円のゲームソフトであれば、そのゲームを楽しもうと思えば5,000円を支払わなければならないわけです。
しかしこのソフトが6,000円で売れたということは、あなたは無料でゲームを楽しんだ上に1,000円儲けたことになりますよね。
このようにゲームを楽しんだ感覚というお金に換算できないものがあるため、会計では捉えにくくなるのです。
それではショップが出品している場合はどうなのでしょう?
この場合はやはり大損をしていることに気づいていないのでしょうか?
いいえ、そんなはずはありませんよね。
ショップが出品している場合は、次のようなことが考えられます。
☆ちょっと想像してみてください☆
あなたは2週間前に5,000円で購入したテレビゲームソフトをヤフオクで出品しました。
このソフトを購入するにあたって、ショップまでの交通費が往復1,000円かかりました。
人気ソフトだったため、家を出てからソフトを購入して戻ってくるまでに、実に8時間を要しました。
なお出品するにあたって電気代や通信費などで500円かかりました。
市場で品薄ということもあり、最終落札価格が6,000円となりました。
あなたの儲けはいくらですか?
1本5,000円のゲームソフトを8時間かけて並んで購入したのであれば、このゲームソフトを購入するために使ったお金は
<(5,000円+1,000円+500円+15,000円=21,500円>となりますね。
この場合はこのゲームソフト1本あたりの購入価格は21,500円だということになります。
この計算式がわからない方は、前回のエントリーを再度チェックしてみて下さいね。
それではショップがこのソフトを20本購入したとしたら・・・。
ソフト1本あたりの購入に使ったお金(これを会計用語では仕入原価といいます)はいくらでしょう?
次のように計算します。
<(5,000円×20本)+(1,000円+500円+15,000円)=116,500円>
この算式の重要な部分は、ソフトを1本購入する場合も20本購入する場合も、使った交通費や人件費などは変わらないという部分です。
そりゃそうですよね!
<116,500円÷20本=5,825円>
これがソフト1本あたりの仕入原価となるのです。
いかがですか?
このソフトを6,000円で売ったらどうなります?
そう! 1本あたり175円の利益となりますね。
20本では3,500円の儲けがっ!
ショップがヤフオクに出品する場合は、このようにして仕入原価を少なくする工夫をしているのです。
今回お話しした内容は、実は非常に重要です。
それでは次回、今回の内容を元にして会計学を考えてみましょう!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
]]>Vol.1〜Vol.3で<売上高>から<営業利益>までを解説しました。
ここで一度タイトルに戻って、「ヤフオクってほんとに儲かるのか」を考えてみましょう。
☆ちょっと想像してみてください☆
あなたは2週間前に5,000円で購入したテレビゲームソフトをヤフオクで出品しました。
人気ソフトだったため行列が出来ており、家を出てからソフトを購入して戻ってくるまでに、実に8時間を要しました。
市場で品薄ということもあり、最終落札価格が6,000円となりました。
あなたの儲けはいくらですか?
これはすぐにわかりますよね?
<6,000円−5,000円=1,000円>です。
でも、あなたは本当に1,000円儲かったのでしょうか?
この1,000円というのは<粗利>に相当するものですよね。
<粗利>には購入代価に含まれるものがありました。
そうです、付随費用です。
あなたはソフトを購入するにあたって、何か付随費用を支払いませんでしたか?
☆ちょっと想像してみてください☆
あなたは2週間前にに5,000円で購入したテレビゲームソフトをヤフオクで出品しました。
このソフトを購入するにあたって、ショップまでの交通費が往復1,000円かかりました。
人気ソフトだったため行列が出来ており、家を出てからソフトを購入して戻ってくるまでに、実に8時間を要しました。
市場で品薄ということもあり、最終落札価格が6,000円となりました。
あなたの儲けはいくらですか?
こんなケースは普通ですよね。
それではこの場合の儲けについてみてみましょう。
<6,000円−(5,000円+1,000円)=0円>
利益は0円となってしまいました。
これでは儲かったとはいえませんね。
「損してないから、まぁいいか」ですって?
ホントですか?
ホントに損してませんか?
もう少しつっこんで<営業利益>はどうなのかを考えてみてください。
<営業利益>とは<粗利>から<販売にかかった費用を差し引いたもの>でした。
あなたは出品するときに何か費用がかかっていませんか?
☆ちょっと想像してみてください☆
あなたは2週間前に5,000円で購入したテレビゲームソフトをヤフオクで出品しました。
このソフトを購入するにあたって、ショップまでの交通費が往復1,000円かかりました。
人気ソフトだったため行列が出来ており、家を出てからソフトを購入して戻ってくるまでに、実に8時間を要しました。
なお出品するにあたって電気代や通信費などで500円かかりました。
市場で品薄ということもあり、最終落札価格が6,000円となりました。
あなたの儲けはいくらですか?
これだといかがですか?
これは机上の理屈ではなく、実際に必要な費用ですよね。
はたしてあなたは儲かったのでしょうか?
<6,000円−(5,000円+1,000円−500円=△500円>
(会計では−を△と表示します)
もしも〜しっ! 損してますよ〜っ!!
儲かるどころか損してしまいました。
それではもう一歩つっこんでみましょう。
今から説明する部分は、会計センスの乏しい新米サラリーマンが陥りやすいところですから、しっかりついてきてくださいね。
☆ちょっと想像してみてください☆
あなたは2週間前に5,000円で購入したテレビゲームソフトをヤフオクで出品しました。
このソフトを購入するにあたって、ショップまでの交通費が往復1,000円かかりました。
人気ソフトだったため、家を出てからソフトを購入して戻ってくるまでに、実に8時間を要しました。
なお出品するにあたって電気代や通信費などで500円かかりました。
市場で品薄ということもあり、最終落札価格が6,000円となりました。
あなたの儲けはいくらですか?
「あれ?どこが変わったの?」
そうです、どこも変わってはいません。
変わってはいませんが、今まで着目していなかった部分があります。
<人気ソフトでしたから家を出てからソフトを購入して戻ってくるまでに、実に8時間を要しました。>
この部分です。
はじめからこの部分に気がついていた方は、かなりの会計センスの持ち主です。
実はこの部分に最も重要なポイントが隠されていたのです。
あなたは8時間もかけてソフトを購入したんです。
この8時間に相当するあなたの時給は、いったいいくらになるのでしょう?
8時間ということは、ほぼあなたの日給に相当します。
仮にひと月の固定給が30万円で、出社日数が20日だったとしましょう。
<30万円÷20日=15,000円>
つまりあなたの8時間に相当する時給は15,000円となります。
これも経費ですよね?
となると儲けはどうなるでしょう?
<6,000円−(5,000円+1,000円)−(500円+15,000円)=△15,500円>
儲かるどころか大損だということがわかります。
いかがですか?
ヤフオクって思ったほど儲かりませんね。
それじゃヤフオクに出品している人たちはみんなわざわざ大損するためにやっているんでしょうか?
中にはショップが出品しているケースもあります。
このお店は損するためにヤフオクに出品しているんでしょうか?
そんなはずありませんよね。
それじゃ、どこに秘密が隠されているのでしょう?
次回までに、あなたも考えてみてくださいねっ!
【キャリアアップの会計センス】
●儲けを判断するには<粗利>ではなく<営業利益>で!
●見えない費用にも注意しよう!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
]]>☆ちょっと想像してみてください☆
出品者であるあなたは、100,000円で購入したデジカメを出品しました。
これをオークションにかけたところ、最終的に150,000円で落札されました。
発送手数料700円は出品者であるあなたが負担しました。
この場合の粗利はいくらでしょう?
これは簡単ですよね?
<150,000円−100,000円=50,000円>
です。
いま「えっ?」って思ったでしょ?
「昨日と同じじゃん」って思ったでしょ?
「間違ってるじゃん、こいつ!」って思ったでしょ?
間違ってるのは、あなたの方ですっ!!
でもね、間違っても良いんです。
その方が記憶に残りますから。
もう一度よく読んでみてください。
「粗利はいくらでしょう?」って書いてありますね。
昨日までで粗利はしっかりとやりましたので、どんなものかはわかったでしょ?
そうです、<売上高−売上原価>でしたね。
そして売上原価は<購入代価+付随費用>でした。
つまりここで間違った方は<発送手数料700円>を付随費用だと勘違いしたってことなんです。
付随費用というのは、その名の通り商品の購入に付随して生じた費用のことです。
今回の発送手数料というのは商品の購入に付随して生じたものではなく、商品の販売に付随して生じた費用です。
こういうものは売上原価とはならないのです。
それでは、これはいかがですか?
☆ちょっと想像してみてください☆
出品者であるあなたは、100,000円で購入したデジカメを出品しました。
これをオークションにかけたところ、最終的に150,000円で落札されました。
発送手数料700円は出品者であるあなたが負担しました。
この場合の営業利益はいくらでしょう?
変更箇所を赤で表示してみました。
今度は<粗利>ではなくて<営業利益>と書いてあります。
結論から言うと次のようになります。
<150,000円−100,000円−700円=49,300円>
つまり先ほどあなたが考えたのは、<粗利>ではなくて<営業利益>だったんです。
はい、わかっています。
「営業利益ってなんだ?」でしょ?
今から説明しますね。
上の例でいくと、粗利から発送手数料を差し引いたものが営業利益でしたよね。
つまり営業利益ってのは<粗利−○○>のことを指します。
この○○がわかれば営業利益がわかるってことになりますね。
結論の前にもう少し詳しく見ていきましょう。
☆ちょっと想像してみてください☆
出品者であるあなたは、100,000円で購入したデジカメを出品しました。
これをオークションにかけたところ、最終的に150,000円で落札されました。
発送手数料700円は出品者であるあなたが負担しました。
あなたはこのデジカメをヤフオクに出品するために、電気代500円・通信
費300円がかかりました。
この場合の営業利益はいくらでしょう?
どんどん現実に近づいてきましたね。
金額の多少は別として、ヤフオクに出品するためにはいろんな経費がかかっています。
この場合の営業利益は次のようになります。
<150,000円−100,000円−(700円+500円+300円)
=48,500円>
注目して頂きたいのは(700円+500円+300円)の部分です。
なぜわたしはこの3つを括弧でひとくくりにしたんでしょうか?
勘の良い方であればおわかりでしょう、この3つは同じ性格を持っているからです。
その性格とは、<商品の購入に付随して生じたものではないけど、商品の販売に要した費用>だということです。
このような費用を総称して<販売費および一般管理費>(プロは<販管費>と呼びます)と呼びます。
一般的に<経費>と呼ばれるものの99%は、この<販管費>に含まれます。
そして<粗利>から<販管費>を差し引いたものが<営業利益>なのです。
ここで<営業利益>とはどのようなものかをまとめてみましょう。
<営業利益>とは商品を販売した大元の利益である<粗利>から、その商品を販売するために要した費用<販管費>を差し引いたものです。
つまり<営業利益>とはその企業が本業で稼得した利益を指すことになります。
「それじゃ副業で稼いだ利益は営業利益じゃないの?」ですって?
うんっ、すばらしいっ!!
その通りなんです。
その話は次回<経常利益>で説明しますね。
【キャリアアップの会計センス】
●付随費用というのは、商品の<購入>に付随して生じた費用
●商品の販売に要した費用を<販売費および一般管理費>
(通称<販管費>)と呼ぶ
●<粗利>から<販管費>を差し引いたものが<営業利益>
●<営業利益>とはその企業が本業で稼得した利益
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
]]>前回は粗利について解説しました。
いくら売上を増やしても、粗利の概念がなければなんにもなりません。
営業の方であれば、上司から「この商品は○○万円までは値引きしてもいい」なんて指示を受けたことはありませんか?
これを何となく聞き流してしまったらそれまでですが、会計の知識があれば「あ、これは粗利を考えての指示だな」ということがわかります。
これがわかるようになると、他の営業パーソンよりも少ない売上で大きな利益を稼ぐことも可能となるのです。
こんな例はいかがですか?
☆ちょっと想像してみてください☆
出品者であるあなたは、商品Aを出品しました。
あなたはこの商品Aを10,000円で10個購入しました。
これをオークションにかけたところ、最終的に11,000円で5個落札されました。
落札者からメールで「10個全部落札したら1個あたりいくらになりますか?」という問い合わせがあったので、「11,000円のところを10,500円にします」と答えました。
この場合の粗利はいくらでしょう?
これは次のようになります。
<10,500円×10個−10,000円×10個=5,000円>
売上高の合計額は105,000円となり、粗利の合計は5,000円ですね。
それではこれはいかがですか?
☆ちょっと想像してみてください☆
出品者であるあなたは、商品Aを出品しました。
あなたはこの商品Aを10,000円で購入しました。
これをオークションにかけたところ、最終的に11,000円で5個落札されました。
落札者からメールで「10個全部落札したら1個あたりいくらになりますか?」という問い合わせがありましたが、値引きはしない旨伝えました。
結果として5個が落札されました。
この場合の粗利はいくらでしょう?
これは次のようになります。
<11,000円×5個−10,000円×5個=5,000円>
売上高の合計額は55,000円となり、粗利の合計は5,000円です。
ここでちょっと考えてみてください。
はじめの例では105,000円の売上高に対して粗利が5,000円、次の例では
55,000円の売上高に対して粗利が5,000円です。
どっちが効率的でしょう?
今回は瞬時に判断できますが、実際にはちょっと見たくらいでは判断がつきません。
じゃあどうすれば良いんでしょうか?
あなたは粗利率という言葉を聞いたことがありますか?
<粗利÷売上高×100>で計算される率のことです。
つまりは売上高の中に含まれる粗利の割合ですね。
これを使えば一目瞭然なんですっ!
それでは早速見てみましょう。
<はじめの例>
5,000円÷105,000円×100=4.76%
<次の例>
5,000円÷55,000円×100=9.09%
いかがですか?
<次の例>の方が、効率が良いことがわかりますね。
粗利率を用いるとこのように利益を稼ぐ効率を測ることが出来るのです。
また<次の場合>を見てみると、このあとさらに5個分の売上の可能性があることがわかります。
デキる社員はこういうところを知っていて、うまく使いこなしているんです。
こうやって書くと誰でもわかりそうだと思うでしょ?
でもほとんどの人がわかっているようでわかっていません。
経営者でさえわかっていない人がほとんどなのです。
だからみんな薄利多売で経営難に陥っているのです。
このように粗利の概念を知っていれば、むやみに売上高ばかり増やしても意味がないことがわかりますね。
次回こそは<営業利益>の予定です。
【キャリアアップの会計センス】
●粗利率とは<粗利÷売上高×100>で計算される率のこと
●粗利率を用いると、利益を稼ぐ効率を測ることができる
●売上ばかり増やしても意味がない!
●効率よく稼ぐことが出世への最短距離!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
]]>みなさんはヤフオクってご存じですよね?
正しくは<ヤフーオークション>と呼ばれるもので、インターネット上のフリーマーケットのようなものです。
出品者が商品をヤフーオークションのページにアップすると、それを見た人が購入希望価格を入札します。
期限までに最も高額の入札をした人がその商品を落札できるというシステムです。
ヤフオクってたくさんの人が出品していますが、本当に儲かるんでしょうか?
もちろん中には不要品を出品している人もいますが、ほとんどが新品ですよね?
☆ちょっと想像してみてください☆
出品者であるあなたは、商品Aを出品しました。
あなたはこの商品Aを10,000円で購入しました。
これをオークションにかけたところ、最終的に11,000円で落札されました。
この場合の利益はいくらでしょう?
これはすぐわかりますよね?
<11,000円ー10,000円=1,000円>です。
上の算式には3つの数字が出ていますが、これを会計学では次のように呼びます。
●11,000円・・・・・売上高
●10,000円・・・・・売上原価(仕入高)
● 1,000円・・・・・売上総利益(粗利)
つまり<粗利=売上高ー売上原価(仕入高)>という関係が成り立ちますね。
それではもう少し複雑にしてみましょう。
☆ちょっと想像してみてください☆
出品者であるあなたは、商品Aを出品しました。
あなたはこの商品Aを10,000円で購入し、着払いで支払いました。
着払い手数料を700円支払いました。
これをオークションにかけたところ、最終的に11,000円で落札されました。
この場合の粗利はいくらでしょう?
変更部分を赤で表示してみました。
ここで気をつけてもらいたいのは粗利という部分です。
利益ではなく粗利としている部分に注目してください。
粗利というものは<売上高ー売上原価(仕入高)>でした。
いかがですか?
<11,000円ー10,000円=1,000円>でしょうか?
でしょうか?って書いているってことは違うってことですよね。
正解は
<11,000円ー(10,000円+700円)=300円>
です。
ここで問題なのは、上の算式の<700円>の取り扱いです。
結論から言うと、この700円は売上原価(仕入高)となるのです。
売上原価(仕入)じゃなくて経費だと思ったあなた、気をつけてくださいね!
この700円は商品Aを購入するために必要だったものなので、会計学的には商品の仕入代金(今回のオークションでは10,000円)と同じだと考えるのです。
これを会計学では<購入代価+付随費用=売上原価(仕入高)>と表現します。
このように同じ購入価格(10,000円)の商品を、同じ価格(11,000円)で落札されたとしても、付随費用がかかっているかどうかで利益が変わってきます。
このように、うっかりすると粗利が1,000円から300円に減ってしまいます。
もしこれがヤフオクではなくて、あなたがはじめて任されたプロジェクトだったとしたら・・・?
そして単位が円ではなくて万円だったとしたら・・・?
冷や汗ものですよねっ!
粗利とは、商品を販売することで稼げた大元の利益のことです。
つまりここがスタートで、ここからいろんな経費が差し引かれることになるのです。
でも、この話はまた後日ゆっくりとしましょう。
今回は商品仕入に伴ってかかった費用は仕入に含めるんだということを、覚えておいてくださいね。
ここまでは大丈夫ですか?
それじゃ、もう少し複雑にしてみますね。
☆ちょっと想像してみてください☆
あなたは、商品Aを10個出品しました。
あなたはこの商品Aを1個10,000円で10個購入しました。
これをオークションにかけたところ、最終的に1個11,000円で8個落札されました。
この場合の粗利はいくらでしょう?
これも変更部分を赤で表示してみました。
そろそろわからなくなってきた人もいるんじゃありませんか?
<11,000円×8個ー10,000円×10個=△20,000円>
(注:会計上マイナスは△で表現します)
ですか?
20,000円も損したんでしょうか?
いいえ、違いますっ!!
ここはみんな一度はつまずくところなんですね。
ここでのポイントは、<2個売れ残っている>という部分なんです。
売れ残っているということはどういうことですか?
そうです、また売ることが出来るってことですよね?
ってことは・・・?
今回のオークションでの利益には関係ないってことになりませんか?
「何となくわかるような気がするけど・・・??」ですって?
それじゃ、もう少し見てみましょう。
☆ちょっと想像してみてください☆
あなたは、商品Aを10個出品しました。
あなたはこの商品Aを1個10,000円で10個購入しました。
これをオークションにかけたところ、最終的に1個11,000円で8個落札されました。
次の日、残った2個をオークションにかけたところ、やはり1個11,000円で2個落札されました。
この場合の粗利は全部でいくらでしょう?
それでは順を追って見てみましょう。
まずは第1日目、8個落札された日の粗利はどうなるでしょう?
これは<11,000円×8個ー10,000円×8個=8,000円>となります。
わかりにくいようであれば、次のように考えることも出来ます。
11,000円ー10,000円=1,000円(1個あたりの粗利)
1,000円×8個(落札された個数)=8,000円
次に2日目です。
もうわかりますよね。
<11,000円×2個ー10,000円×2個=2,000円>
です。
つまり<8,000円(1日目の利益)+2,000円(2日目の利益)=10,000円>となります。
このように、粗利とは<売上高ー(売れた個数に直接対応する個数分の売上原価)>となるのです。
平たくいえば<売れ残ったものは、粗利の計算上は考慮しない>ということですね。
次回は<営業利益>について見ていくことにしましょう。
【キャリアアップの会計センス】
●粗利とは、商品を売って稼いだ大元の利益
●商品仕入に伴ってかかった費用は仕入に含める
●売れ残ったものは、粗利の計算上は考慮しない!
]]>